2021年5月1日更新(81号)
風鐸ゆれて 馬宮 敏江
大和川の向かいは住之江ビルの間をほんのり煙る春の
二上
冬ざれの庭に初花、侘助の少し寂しい孤独のかげり
曇りとも降るとも見えぬやよい空 洗濯籠を持ちて迷える
足るを知る 共に学びし京の寺足るを知りたる友が旅立つ
一斉にヨーイドンを待っている芽吹きの庭にあふれるひかり
うす明かり朝のゴミ出し未だ覚めぬ肩にやさしい春の雨降る
星砂の友の形見のキーホルダー、ペダル踏むたび小さき鈴音
「レッツゴー」水牛出発、竹富島を笑顔に語る友でありしに
色褪せてホロホロ零れるエビネ蘭純白ほこりし半月ほどを
震度6,歌友住みませし仙台の地の安かれとニュースを見つつ
水温む大和川の鴨の群れ
水脈ひかりつつ北帰の近し
一人前のギョウザの野菜きざむ音箸置くさえも乾いたひびき
陽の射さぬ狭庭にあれば鳴子百合、姫ひおおぎもひそと息づく
地に桜、空に一すじ飛行機雲 令和の春の安らぎの風
群れていし親鴨子鴨の影消えて土堤の桜の満開近し
花マスク便利な物か「おねえさん郵便局は?」問われてドキリ
自粛してテレビを見つつウトウトと申し訳なき吾がテレワーク
薬師寺の修復なりし西塔の風鐸揺れて天平の音
この町に棲みて覚えし恵方巻いつしか吾が家も習いとなりぬ
音も無くひと夜を濡らす寒の雨芽吹きうながす気配ふくみて
初空にカイトの群れて子らの声
奴の凧はどこに消えしか
手作りのポセット肩にお年玉集金する
曾孫待ちわびている
久々に
外出の空の花曇り誰かに会えるような気がして
童謡がいつの間にか消えてゆく
曽孫と一緒に一寸法師
振り向けば
吉事・
禍事繰り返し余生の日日の穏やかなれと
▲上へ戻る